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神戸家庭裁判所姫路支部 昭和41年(少ハ)4号 決定 1966年12月01日

本人 R・K(昭二一・一〇・二四生)

主文

本人の収容を昭和四二年一月三一日まで継続する。

理由

本件申請の要旨は「本人は、意思薄弱で被影響性が強いため、職場において誘惑や刺激に動揺することが多く、勤労意欲を欠て安易な生活をくりかえして来たものである。そこで職業訓練により職業技能を習得させながら本人の勤労意欲と自主性を涵養し、犯罪的傾向を矯正すべく、昭和四一年二月一日職業訓練法に基く職業訓練課程(板金科)に本人を編入し、昭和四二年一月三一日その課程を終える見込みである。しかしながら、本人は昭和四一年一二月二日をもつて少年法第一一条第一項ただし書の期間が満了するため、法令に定める職業訓練課程を未完のまま出院させることとなり、これまでの訓練成果を活かしきれないこととなる。父親が同種の職業についている本人の家庭環境からみても、前記職業訓練の課程を修了させて、労働省職業訓練局長の履習証明書(社会の職業訓練所の修了証明書と同一の効力を有する。)を取得させることが、本人の将来の生活設計、職業安定の上に役立つと共に、本人が将来再び犯罪に陥ることを防ぐ機能をもつことになると思料するので、前記訓練課程を終了する昭和四二年一月三一日まで本人の収容継続を申請する。」というにある。

本人および浪速少年院分類課長十河一の各供述ならびに一件記録を総合すると、本人は、知能は準普通域にあるが、性格は被影響性が強く、自己統制が困難でささいなことに刺激されて動揺する傾向にあり、勤労意欲にとぼしく、安易に共犯者と同調し、窃盗、恐喝等の非行を重ねて、当裁判所において、保護観察あるいは試験観察の処分を受けながら、更生できずにいたものであるところ、浪速少年院に入院以来初期の生活訓練を経たあと、昭和四一年二月一日職業訓練課程(板金科)に編入され、昭和四二年一月三一日その課程を終える見込みであるが、現在に至るまで、けんかによる課長説諭を一回受けたほかは、本人も自重して反則事故もなく処遇もすでに一級上に達していることが認められる。

しかしながら、本人の前記性格、行動傾向ならびに挫折の多かつたこれまでの生活歴等に鑑みればすでに大半の課程を履修した前記職業訓練課程を、むしろ全うさせることが、本人の性格並びに犯罪的傾向を矯正するために必要であると共に、本人の更生のために有益となるであろうことが認められる。そこで前記訓練課程が終了する昭和四二年一月三一日を限度として本人の収容を継続するのを相当と認め、少年法第一一条第四項により、主文のとおり決定する。

(裁判官 内匠和彦)

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